今回は英語の学習法として効果が高いと言われる“音読”について、おすすめの方法を中心に紹介したいと思います。
音読学習の重要性についてはさまざまなメディアで語られています。語学研究者・英語指導者から英語系YouTuberにいたるまで、さまざまな立場の人たちが音読の有用性を訴えています。
その一方で、具体的な方法論については確固たるやり方が確立されているとは言えません。
英語学習者にとっては、「音読の重要性はわかった。じゃあ実際どうやるの?」というのが本音ではないでしょうか。
ボク自身は大学受験の際に英語の音読学習に出会いました。当時はまだ音読学習は「少数派」でしたが、実際に取り組んでみるとその効果の大きさを感じることができました。
そして社会人となった今、英語学習を再開しましたが、音読の方法については、受験生時代から変えることなく継続しています。
さまざまな方法がある中の一つとして、今回紹介する方法を参考にしてもらえるとうれしいです。
音読のやり方に加え、ボク個人が感じた音読の効果やシャドーイングとの違い・音読におすすめの教材なども紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事では、以下のような情報を知ることができます。
- 音読の効果・シャドーイングと異なる点
- おすすめの音読のやり方
- 音読を行うときに意識すべきこと
- 音読におすすめの教材

この記事を書いた人
ヒラク
TOMOSU BLOG 運営者・執筆者
早稲田大学政治経済学部政治学科卒 / TOEICスコア 現在920点
なぜ音読をすべきなのか~音読の効果・シャドーイングとの違い~

まずはじめに、そもそもなぜ音読をすべきなのかということから話したいと思います。
音読によって得られる効果として最も大きいのは、「英語脳になれる」ということです。
日本語を介さずとも、英語を英語のまま理解できるようになることが、音読のメリットなのです。
そして、「英語脳になる」ということはつまり、リスニング力、リーディング力など英語4技能すべての底上げにつながるのです。
この点がシャドーイングとは異なる点です。いろいろなとらえ方があるでしょうが、個人的にシャドーイングはリスニング力をアップするためのものだと考えています。
上の図を見てください。
①がリスニング力、つまりシャドーイングで強化できる部分です。そして②が英語を英語のまま理解する能力、つまり音読によって強化できる部分となります。
シャドーイングをたくさんこなしているけどリスニング力が思ったように上達しないという人は少なからずいるでしょうが、原因はここにあります。
①の能力は高いけれど、②の能力が弱いということです。
シャドーイングをくりかえしても、「英語脳」ができていなければ、英文全体の意味を把握することは難しいのです。
ひとつひとつの単語は聴きとれるけど、それが積み重なって“英文”という形になると意味が分からないのは、どんどん耳に入ってくる英文を処理しきれず、理解が追いつかないからです。
音読を通して作られた「英語脳」という基礎がなければ、シャドーイングによるリスニング力アップは効果が薄いと言えるでしょう。
英語4技能を伸ばすために、「音読」という基礎トレーニングが必要なのです。
英語音読のやり方

それでは、いよいよボクが個人的におすすめする音読のやり方について紹介します。
①英文をコピーする(拡大コピーがおすすめ)

まずはじめに、英文のコピーをとります。
これは、後で説明する構文を記入するためのものです。
多くの教材は英文の行間が狭く、構文を記入するスペースが少ないので拡大するのがおすすめです。
スラッシュリーデングを好む方も、スラッシュを書き込むスペースのためにコピーすることをおすすめします。
②構文をとる(意味ごとにスラッシュで区切るという方法でもよい)

次に、英文のコピーに構文を記入していきます。
スラッシュで区切る読み方に慣れているという方であれば、そちらの方法でも構いません。
ボク自身は画像にあるように、構文をとるという方法を選択しています。
英文を読むうえで、構文を意識して読むことは欠かすことのできない要素だからです。
まだ構文をとることができないという方は、構文解説のついた教材を活用するのも良いと思います。
大学受験の教材の中にはそのようなものもあります。(教材の一例を後ほど紹介します)
英文の構造を認識できて、かつ、あなたの取り組みやすい方法でやってみてください。
③意味の分からない単語・熟語を調べる

次に意味の分からない単語を調べます。
ボクは音読中に日本語を目にしないように、英文とは離れた場所(コピーの端の方)に単語の意味を書き込んでいます。
ここで、先ほど挙げた「【構文をとる】という手順と順番が逆なのでは?」と思うかもしれませんが、基本的にはこの順番で大丈夫です。
構文をある程度取ることができる方であれば、まず構文をとり、その構文を基に知らない単語の意味を類推することができるようになります。
ただし、先ほど挙げたように初学者の方や、スラッシュ読みをする方は先に単語の意味を調べてもOKです。
④音源を通して聴く

次に音源を通して聴きます。
通しで聴いて、全体的な抑揚の付け方や“間”の入れ方などをおおよそでいいので、つかんでください。
ただし、時間がなければこのプロセスは飛ばしても構いません。
何度も話しているとおり、音読の目的は「英語脳を作ること」にあります。
音源通りにキレイな発音でなくても、声に出して読みさえすれば「英語脳を作ること」は可能なのです。
音読においては「音源を聴く」プロセスは補完的な位置づけとなることを理解してください。
⑤1つの英文5~10回を目安に音読を行う(1週間くりかえす)

そして、1つの英文を分量に合わせて1日5~10回を目安に音読します。
それを1週間続けます。
ボクは1回の音読が終わるごとにシャチハタの印鑑をポンッと押しています。
自分の努力を「見える化」することが、毎日継続していく上でとても効果的だと思うからです。
1週間続けたら、その英文の音読は終了。
また新しい英文をコピーするところから始めます。
※構文の勉強法については以下の記事にまとめています。

音読をするときに意識すること

それでは、上記のような手順で音読を行うときに意識すべきことについて紹介します。
発音は気にしない=英文の理解に意識を集中させる
先ほども言った通り、まず大切なことは、「発音は気にしない」ということです。
もちろん発音をしっかりとできるのであれば、それに越したことはありません。ですが、音読学習の要点はそこではないということです。
ポイントとなるのは、「意識を向けるべきは発音ではなく、英文の理解である」ということです。
音読の目的は、発音を上達させることでも、リスニング力のアップでもありません。これらはあくまでも、副次的な効果にすぎません。
第1の目標は、英語を英語のまま理解できるようになること=英語脳の育成にあるのです。
ですので、発音に意識を向けるのではなく、英文の構造や流れに意識を向け、日本語を介在させずに意味を理解することに意識を向けることが大切です。
これは音読を多くこなしている上級者でもおろそかになってしまうことがあるので、注意が必要です。ついつい「声に出す」ということに意識が行ってしまい、「ただ読んでいるだけ」になってしまうことがあるからです。
英文の意味を日本語に置き換えない
次に意識すべきことは、「英文の意味を日本語に置き換えない」ということです。
授業・講義で日本語訳にするプロセスがある場合もあるでしょう。それはそれで構いませんし、問題集の解答ページに日本語訳がついているので、それをチェックするのもOKです。
ここで言う「日本語に訳さない」というのは、音読をしている最中のことです。
実際に英文を声に出して読む過程で、日本語で理解しようとせず、英語を英語のまま理解するように努める、ということが大切です。
はじめのうちは難しいかもしれません。まだ慣れないうちは、英語の長文の中で、比較的構文がシンプルなものを英語のまま理解するようにしてみましょう。
たとえば、SVの第1文型で、修飾語もないシンプルな英文などです。
いきなり第5文型で、後ろから長い修飾語がかかっているような複雑な英文を、英語のまま理解するのは不可能かもしれないので、自分のできる範囲でチャレンジしてみてください。
毎日継続する
音読は1日にたくさんの量をこなすよりも、毎日一定の量を継続していくことが大切です。
そのために意識すべきことは、「楽しむ」ということではないかと思います。
例えば、あなたがTOEIC学習者であるならば、音読の材料にはTOEICの教材でないモノを選ぶのも良いと思います。
自分の興味のある分野の本や、さまざまなジャンルの英文を網羅的に扱っている本などを使ってみると、楽しみながら、毎日ムリなく継続できるでしょう。
英語学習の一環ではあるけれど、普段の学習よりもいくらか気楽な向き合い方で、音読に取り組んでみてください。
感情をこめて読む
最後に意識すべきこととして紹介するのは「感情をこめて読む」ということです。
これはボク自身も最近知ったのですが、英語系YouTuberであるイングリッシュおさるさんの提唱しているやり方です。
英語脳を作る過程で、言葉というものが感情から生まれてくるものだと考えると、理にかなった方法だと思います。
小説やフィクション系の読み物であれば、その世界に入り込んだつもりで音読します。また、論文やニュース記事のような堅めの文章であれば、それを読み上げる教授やニュースキャスターの目線で音読します。
より詳しく知りたいという方は、こちらのイングリッシュおさるさんの該当動画を視聴してみてください。
英語音読におすすめの教材10選

それでは、音読をするにあたっておすすめの教材を紹介します。実際に書店に足を運んでリサーチした中から10冊に絞ってみました。
選ぶうえで重視したのは、①音読に適した長さであること、②読み物としても面白いこと、③音源に対応していることの3つです。
それぞれの教材の特徴やおすすめポイントをコンパクトにまとめてみました。
テーマ別英単語 ACADEMIC
個人的にかなりおすすめの1冊。その名のとおり、アカデミックな英文が収録されている。
経済・心理学・社会学からエッセイにいたるまで幅広い知識を、日本語の解説付きで学ぶことができる。
難易度も初級・中級・上級から選べる。
英文のクオリティの高さに加え、音読にちょうどよい長さであるのもうれしいポイント。
音声CD対応。
話す・聞く・書く・読む 4技能に効くはじめての英語音読
まだ英語力に自信のない方におすすめ。
著者は予備校界で早い時期から音読の有用性を訴えていた安河内哲也氏。
英検5級から英検準2級レベルの英文を段階的に読み進めていくことができるので、英語力を上げながら音読学習を進められる。
音読用としてだけでなく、シャドーイング教材としても活用できるので、リスニング力アップにも使える。
音声はCDに加え、ダウンロードも可能。
みるみる英語力がアップする音読パッケージトレーニング
こちらもまだ英語力に自信のない方におすすめ。
上で紹介した「はじめての英語音読」同様、シャドーイング学習にも対応している1冊。
内容は物語調の英文が多い印象。
やわらかめの英文を使って音読したいという方にはうれしい内容だと思う。
初級~上級まであるが、上級は品切れ状態で増版の予定もないとのことなので注意が必要。
音声CD対応。
音読JAPAN 改定版
日本の街並みや観光・飲食についての英文を収録した1冊。
英文のレベルとしては高校~大学レベル。
ボクたち日本人にとっては背景知識が十分にあるジャンルばかりなので、英語力に自信のない方でもチャレンジしてみる価値あり。
音声は無料でダウンロードでき、シャドーイング教材としても使用可。
個人的に英文の長さが長すぎず、短すぎずで、音読にはちょうど良い。
音声ダウンロード対応。
1日10分 超音読レッスン
日本に「脳トレブーム」を起こした川島隆太氏の監修した1冊。
本書には「日本紹介編」のほか、「世界の名作編」「世界の名スピーチ編」など多くのシリーズがある。
英文のレベルとしては高校レベル。
1日10分と謳っているだけあって、長さも短めでスキマ時間での音読などに活用できる。
音声CD対応。
毎日の英速読 頭の中に「英文読解の回路」をつくる
スラッシュリーディングを推奨しているので、スラッシュで意味を区切りながら、音読をしたい方におすすめ。
レベルとしては高校~大学レベル。
分量としては短めのものが多いが、内容的にレベルが高く、読み応えのある英文もある。
音声ダウンロード対応。
大学入試問題集 関正生の英語長文ポラリス
構文をとる方法で音読したい方におすすめの1冊。
大学受験の問題集だが、個人的に大学入試の英文は構文がキレイで音読に向いていると思う。
解説ページでは、1文1文の構文も解説しているので、構文を学びつつ音読ができる。
長さとしては今回紹介した教材の中では長め。
音声ダウンロード対応。
シンプルな英語で話す日本史
「日本史」「世界史」「アメリカ史」の3パターンがある。
左ページに英文、右ページに日本語訳で見やすいレイアウト。
日本史バージョンを見る限り、英文は高校レベル。
通史を英文で学ぶことができ、歴史好きの方にはおすすめ。
音声がCD-ROMなので注意が必要。
英語ニュースの教科書 : 新聞で時事英語がスラスラ読めるようになる!
英語ニュースの英文を収録している1冊。
英語ニュースの構造やニュース英文に特有の表現にも触れているので、ビジネス英語に慣れ親しむことができる。
英語ニュースを理解したり、日常的に英字新聞を読んだりすることにつなげたい方におすすめ。
レベルとしては難しめのものが多い印象だが、分からない単語を推測しながら読み進める方法も紹介している。
音声ダウンロード対応。
上級英単語 LOGOPHILIA ロゴフィリア
単語帳だが、掲載されている長文のクオリティが高く、ボキャブラリーも強化できる。
英文のレベルは高いが、難しめの英文を使って音読したい方、ボキャブラリーも強化しつつ音読したい方におすすめ。
音読を継続するうえで、知的好奇心を刺激してくれる英文を使うことは非常に大切。
試験の先を見据える方はチャレンジしてみる価値あり。
音声ダウンロード対応。
まとめ:毎日ちょっとずつを楽しみながら

いかがだったでしょうか。
自分のこれまでの英語学習を振り返ったときに、大学受験で第1志望の大学に合格できたのも、TOEICで比較的短期間で800点台に到達できたのも、音読学習による部分が大きいと思っています。
英語4技能の全体的な底上げを図るために最適な方法が音読学習なのです。
そして、大切なのは「継続すること」です。そのためには「楽しむこと・初めから発音にとらわれないこと」などを意識してみてください。
長年、受験予備校で教鞭をとってきた東進ハイスクール講師・今井宏先生は、その著書の中で次のように語っています。
「要するに、声を出して読みさえすればそれでいい」というのが正しい姿勢なのである。
物事はできるだけ単純に、複雑にしないほうが間違いなく長続きする。
一番ダメなのは、複雑化しすぎて長続きせず、1週間も続けないでサッサとヤメちゃうことである。
「さあ、音読だ ~4技能を伸ばす英語学習法~」より引用
ボク個人の主観的な経験談が中心となりましたが、1人の英語学習者の話として、他の情報とも比べながら、参考にしてもらえればと思います。
今回の記事があなたの英語学習にとって役立つものであったなら、とてもうれしく思います。
ボク自身も現役の英語学習者です。一緒に頑張りましょう!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

