今回はYoutubeでも活躍されているAtsueigo運営者・ATSUさんによる英単語帳「Distinction 2000」をレビューしたいと思います。
実際に学習した感想を結論から言うと、「めちゃくちゃイイ!」と感じました。
ボクはこれまで、大学受験に使われるようなオーソドックスな英単語帳しか使ったことがなかったのですが、Distinction 2000 を使ってみて、英単語帳に対する概念が変わりました。
TOEICなどの資格試験対策にはもちろん、英語を楽しく学びたいという方にも最適な1冊だと思います。
本書を10周以上学習した主観的な感想に加え、客観的なデータやクチコミも紹介します。
以下ではまず、実際に使ってみて感じた感想を述べ、その後に本書の概要・構成・客観的な評価などを紹介します。
すでに本書の概要を把握しているという方は、主観的なレビュー部分だけをお読みいただければと思います。
この記事は、次のような方におすすめです。
- Distinction 2000 の特徴や実際に使った感想を知りたい。
- Distinction 2000 の良かった点・悪かった点は?
- Distinction 2000 って大学受験でも使えるの?
- Distinction 2000 が勧める英単語学習法って?
- ATSUさんが出版している他の単語帳との違いを知りたい。
この記事を書いた人
ヒラク
TOMOSU BLOG 運営者・執筆者
早稲田大学政治経済学部政治学科卒 / TOEICスコア 現在920点
Distinction 2000 を使ってわかった特徴・他の単語帳との違い
実際にDistinction 2000 を使ってみて感じた特徴・他の単語帳との違いは、次のとおりです。
真の英語力を手に入れたい人をターゲットにしている
まず、本書の特徴として、「真の英語力を手に入れたい人をターゲットにしている」という点があります。
著者のATSUさんは英語を立体的なものとして捉えています。
大学入試や資格試験のための学問的な側面、日常会話やビジネスで使用される実践的な側面、英語という言葉には様々なカオがあります。
これまでの単語帳は、試験に特化したものや、海外旅行で使えるワンフレーズに焦点を当てたものなどはありましたが、英語力を立体的に作り上げていくには不向きなものばかりでした。
「試験で点数を取れたらそれでいい」「海外旅行に行って最低限の会話さえできたらOK」という人向けの単語帳はあっても、真の英語力を手に入れたいという人向けの単語帳はなかったと言えます。
本書はそのような状態に終止符を打つ、新時代の単語帳なのです。
英語は立体的なもの…。言われてみれば当たり前だなぁ。
確かに…。学生時代は試験という側面からしか見てなかったな。
見出し語だけでなく、関連語も深いこだわり
本書は見出し語だけではなく、関連語にも深いこだわりを持って作成されています。
中でも、関連語(同意語・反意語等)にも発音記号が付されている点が意外と便利でした。
“意外と”というのは、ボクが使用してきた単語帳では、関連語にまで発音記号が付されていることはなく、ボク自身それが当たり前だと思っていたからです。
リスニング問題で、聴きとることができなかった部分のスクリプトを見てみると、「意味は知っている単語だった」という経験はありませんか?
やはり、その単語の発音までモノにしてこそ「使える知識」と言えるわけですから、すべての単語に発音記号がついているのは、うれしいポイントでした。
また、多くの関連語にも例文がついている点、たくさんの関連語を掲載している点といった点も他の単語帳に比べて優れていると感じました。
関連語を含めた細部にも、深いこだわりを持って作られた単語帳だと思います。
ここまで関連語にこだわってる単語帳、見たことない!
実際の英語の世界では【見出し語】【関連語】の区別はないので、本当に実用的ですね。
例文が実用的&笑える
次に感じた特徴は、例文や英語表現がイキイキとしていることです。
ATSUさん自身が、これまでの英単語帳に掲載されていた例文があまり実用的でないことを指摘していることもあって、その部分のクオリティーにはかなりこだわっているなと感じました。
中には思わず笑ってしまうような面白い例文があるので紹介します。
My coach suggested that I drink 30 glasses of milk a day , but I think that’s impossible .
コーチに牛乳を1日30杯飲んだ方がいいって提案されたんだけど、さすがにそれは無理でしょ。
Mike told me that he’d found the perfect method to pick up girls , but he failed right in front of me .
マイクが女の子をナンパする完璧な方法を見つけたって言ってたんだけど、目の前で失敗してた。
I think the 80% decline in my Instagram followers was because I posted about 20 pictures of my face in a row .
インスタのフォロワーが80%減った理由は、自分の顔の写真を20枚くらい連投したからだと思う。
「Distinction2000」より引用
普通の単語帳には載っていない、とてもユニークな例文ですよね。
ボクが好きなのは、「顔写真を投稿したらフォロワーが減った」という例文です。勉強しながらひとりで笑ってしまいました。
他にもたくさんの“笑える”例文が掲載されていますので、ぜひ本書を手にとってみてください。
例文の日本語訳表現もおもしろいですよね!
「さすがにそれは無理でしょ」とか、日常会話っぽくてウケるw
細かいところにたくさんの工夫がちりばめられている
本書を繰り返し学習してみて分かったのは、些細だけれど、とても役に立つ工夫がちりばめられている点です。
本当によく見なければ気が付かないレベルでの工夫ですが、実際に学習してみるとその工夫の効果の大きさに感心させられます。
例えば、【cuisine:料理】という単語は見出し語ではないのですが、例文中で定期的に出てくるので、自然と覚えることができます。
“定期的に”というところがポイントで、忘れてしまいそうなタイミングで登場するので、そのあたりも計算されているのだと思います。
他にも、深く学習すると見えてくる工夫がたくさんあります。ATSUさんが徹底的にこだわって執筆したんだなと感じました。
ATSUさんのこだわりを発見していく楽しさもありますね!
何周も学習すると、ATSUさんが埋め込んだ工夫が徐々に見えてきますよ!
デザイン・レイアウトが洗練されている
本書を見て、まず目につくのが「デザインがおしゃれ」という点でしょう。
これまでの単語帳の概念を覆すような洗練されたデザインは、学習者のモチベーションをサポートしてくれます。
また、本書を開くと、レイアウトにもこだわっていることがわかります。
たくさんの例文や関連語が整然と並んでいて、とても見やすく、毎日学習するうえで苦痛になりません。
さらに40チャプターそれぞれの構成が同じで、学習ペースを把握しやすく、日々の英語学習に取り入れやすい作りになっている点も大きな特徴です。
他にも、【 文字とイラストのバランス 】、【 文字のフォント 】、【 紙の質感 】なども優れているポイントだと思います。
おしゃれ好きのボクは、もう表紙でやられちゃいました…。
私もヤバイかも…。
Distinction 2000 のここが良かった
Distinction 2000 を使って、良かったポイントは以下のとおりです。
Active Recall がかなり効果的!
良かったポイントとして、まず最初にあげたいのが「Active Recall」という復習箇所を指定してくれる仕組みです。
この単語帳を購入して良かったポイントは多くありますが、その中でも1番大きなメリットがこの点だと思います。
個人的に、英単語帳の学習において復習の重要性は認識していましたが、復習範囲についてまで学習計画を立てるのが面倒で、効果的な復習というのはできていませんでした。
そのため、復習の範囲が日によってバラバラで、何度も触れる単語とあまり触れない単語に分かれてしまっていました。
これはボクだけではなく、「英語学習者あるある」かもしれませんね。
Distinction 2000 は「Active Recall」で復習するチャプターをはじめから指定してくれていますので、そもそも復習範囲について学習計画を立てる手間が省けます。
※上の参考画像では、Chapter11を学習する日の復習範囲を、Active RecallがCH.4,7,10と指定しています。
また、復習箇所についても科学的根拠をもとに提示してくれていますので、ボクたち学習者が“なんとなく”復習範囲を決めるよりも、はるかに有効であると言えるでしょう。
復習プランまで考えるのってだるいんだよなぁ。
わかる!すごく、わかるっっ!
単語帳だけじゃない!さまざまな用途で使える
本書は単語帳として優れていることはもちろんですが、付属している音声を活用すれば、音読やシャドーイングのための教材としてもレベルが高いと思います。
音声については後で詳しく触れますが、収録音声のクオリティの高さに加えて、長文・例文がおもしろいので、音読・シャドーイングを楽しみながら繰り返していくことが可能です。
実際に、ボク自身は2周目までは単語帳として、3周目以降は音読・シャドーイング教材として使いました。
長文の長さも音読・シャドーイングにピッタリで、日々の学習に無理なく取り入れることができ、ボキャブラリーと並行して、英語力を総合的に伸ばすことができます。
これまでの単語帳だと、単語帳として何とか内容を消化できたとしても、長文・例文が堅苦しくて単語帳以外の使い方をしたいなんて思えなかったので、この点もかなり満足でした。
長文・例文がおもしろいことで、そんな使い方もできるわけですね!
音読教材・シャドーイング教材として売られていてもおかしくないクオリティーです!
ボキャブラリーを“深める”ことができる
単語帳でボキャブラリーを“広げる”ことは当然ですが、本書はボキャブラリーを“深める”ことも意識していると感じました。
ひとつ例を挙げます。
本書には見出し語として、【 book 】という英単語が出てきます。
【 book 】なんて小学生でも知っている単語なので、最初に見たときは「なぜこんなに簡単な単語を収録したんだろう。代わりにもっとタメになる単語を載せてほしいな」と思いました。
しかし、【 book 】の意味を解説している部分を見て、納得させられました。
まず、可算名詞として【 書籍・本 】という意味があること。そして、複数扱いをするものとして【 会計簿・帳簿 】という意味があることが説明されています。
つまり、【 会計簿・帳簿 】という意味で使うときは、1冊であっても【 books 】と【 ~s 】が付くわけです。
それにプラスして、動詞としては【(~を)予約する 】という意味があることもしっかり掲載されています。
誰でも知っているような英単語を掘り下げることで、ボキャブラリーの深みを増すことができるのです。
他にも、1つの単語に対する関連語が充実していたり、すべての名詞の意味に可算・不可算の仕分けをしていたりと、ボキャブラリーを深める工夫がされています。
なるほど。収録されてる単語ひとつひとつに意味があるんだ。
「なぜこんなに簡単な単語を収録したんだろう」と思ってしまったのもATSUさんの計算通りなのかもしれない…。
高い学習モチベーションを維持できる
本書は長文が知的好奇心をくすぐるような、おもしろいものばかりです。また、先ほど紹介したように、例文が実用的で笑えるという特徴もあります。
他の単語帳にありがちな、堅苦しくて勉強する気を失うような内容ではなく、楽しみながら学ぶことのできる単語帳なのです。
ATSUさんは本気の英語学習者をターゲットにしているので、【復習範囲が広い】【覚えなきゃいけない関連語がたくさん】といったハードな面もあったことも事実です。
ただ、そういった、学習につきもののハードさを楽しむために、長文・例文をイキイキとした内容にしていて、高い学習モチベーションを維持することができたように思います。
単語帳としてではなく、純粋に「読み物」としてもおもしろい!
洋書を読んでる感覚だから、モチベーションが落ちないのかも。
付属音声がナチュラル
付属音声がナチュラルなことも、良かったポイントです。
これまで使ってきた英語学習書では「ホントにそのテンションでしゃべる?」とツッコミたくなってしまうような不自然なナレーションばかりでした。
英語学習者向けに、過剰にアクセントを強調したり、イントネーションの抑揚をつけたりといったことは、試験のスコアに結びつくことはあるかもしれませんが、実際の英語とはかけ離れたものです。
本書では、「ネイティブが隣で話している」場面を想定して音声を収録しています。
実際に聴いてみればわかりますが、自然なスピード・テンションであると同時に、耳なじみが良い声です。
また、スピードについては2種類あり、初学者の方はゆっくりとした音声を選ぶこともできます。
「ネイティブが隣で話している」って有りそうで無かったコンセプトですね!
はい!音声のクオリティでも資格試験の先を見すえていることがわかります。
Distinction 2000 のここが残念・ここは注意が必要
Distinction 2000 を使ってみて、残念だったポイント・注意が必要だと感じたポイントは以下のとおりです。
この1冊だけでTOEIC920点・英検準1級が取れるわけではない
まず注意してほしいのが「この1冊だけでTOEIC920点・英検準1級が取れるわけではない」という点です。
本書の学習を通じて到達できる目安としては、上の図のようになっています。
実際にDistinction 2000 に収録されている英単語を見てみると、英語上級者でも難しく感じてしまう英単語から、中学生でも知っているものまでさまざまです。
難易度の振り幅が大きいと言えます。
先ほど話したとおり、簡単な英単語の意外な意味を収録することで、ボキャブラリーに深みを持たせることができ、それがこの単語帳の強みなのですが、それでもこの1冊だけでTOEIC920点・英検準1級は厳しいでしょう。
amazonなどのレビューでは、この点を取り上げて、低評価コメントを残している人もいました。
ただ、ボク自身の見方は違います。
YouTubeやX(旧Twitter)でのATSUさんの情報発信を普段から見聞きしていればわかることですが、ATSUさんは英語という学習対象を総合的に捉えています。
英単語ひとつにしても、単語帳だけの学習でモノになるのではなく、「読む」「聴く」を含めた複合的な学習が必要なのです。
Atsuさんの意図としては、Distinction 2000 を大きな軸としてもらいつつ、当然それ以外の学習にも取り組んでもらうということが念頭にあるのだと思います。
なるほど。本書はあくまでも「真の英語学習」の入り口ってことかぁ。
「真の英語学習」の世界に入ってしまえば、いずれ上記のスコアも簡単にクリアできるはず。
ダウンロード音声が使いづらい
ボクが感じたマイナスポイントとしては、ダウンロード音声が使いづらいことがあげられます。
音声のクオリティ自体は高く、スピードも【 natural 】と【 slow 】の2種類に対応しているため、質的な問題はないのですが、自分が聴きたい音声にアクセスするのがかなり面倒です。
上の画像は、音声ダウンロード後の画像なのですが、ただ単語や例文が羅列してあるだけですので、自分がその日に学習したい箇所を探すだけで目が痛くなります(笑)。
スマホアプリの音声も同じような羅列です。
ピンポイントで必要箇所にアクセスできるように改善されるといいなぁと思います。
確かに、ここは改善してほしいなぁ。
音声のクオリティーが高いだけに残念…。
単語帳の用途だけであれば、価格が高い
Distinction 2000 は、単語帳としてはお高めの価格です。(税込2,640円)
もし、あなたがこの単語帳を「単語帳としてのみ」使うのであれば、割高と言えるでしょう。
先ほども話したように、この単語帳はいろいろな使い方ができます。
単語帳としての使い方だけで終わってしまうのでは不十分ですし、Distinction 2000 の良さを生かしきれていないことになってしまいます。
また、こちらも繰り返しになりますが、英語力を総合的に伸ばすためではなく、とにかく資格試験で目標点数が取れたらそれでいいという人にとっても価格が高いと思います。
資格試験で点数を取ることだけを考えているのであれば、他の安い単語帳でも十分に目的を達成できるからです。
逆に、「さまざまな用途で学習する」「真の英語力を養成するために購入する」のであれば、むしろ安いのではないかな、と感じました。
「高い」か「安い」かは、使う人次第ってことですね!
“安い”と感じられるように、本書を使い倒しましょう!
Distinction 2000 はこんな人におすすめ!
Distinction 2000 をおすすめしたいのは、以下のようなタイプの方です。
資格試験のスコアよりも真の英語力を手に入れたい
本書は「試験で点数を取れたらそれでいい」という人よりも、その先を見すえる人に向いている単語帳だと思います。
はじめに断っておくと、この単語帳はTOEICで頻出の語句や表現も多く収録されています。ボクはTOEIC対策の単語帳として「キクタンTOEIC」も使用しましたが、本書の収録語とかぶっている単語も多くあります。
「試験で点数をとる」という分野もしっかりとカバーしつつ、「『プラスα』が充実している」という特徴があるのです。
扱っている長文のクオリティ、関連語の多さなど、「真の英語力養成」という目標を持つ人にふさわしい内容です。
また、ところどころで英単語の細かなニュアンスについてATSUさんのコメントが記載されていますが、ネイティブでも混同してしまうような細かい部分についてまで言及しています。
資格試験も考えてはいるけど、試験オンリーってわけじゃないんですよね。
「英語力を高めた結果、資格試験でもいいスコアがとれた」という状態を目指す人におすすめ!
英語の学び直しに取り組みたい方
英語の学び直しに取り組みたい方にもおすすめです。
資格試験も何となく考えてはいるけれど、TOEICや英検に特化した単語帳に取り組む前に、まず楽しみながら英語の感覚を取り戻したい方に最適だと思います。
長文がアカデミックなものばかりなので、読み物としても楽しめることは既に触れました。
長文の形式に目を向けると、【 ニュースサイトの記事形式 】【 日常会話形式 】【 公共施設でのお知らせ形式 】など多岐にわたります。
内容だけでなく、さまざまなパターンの英文がある点も楽しめるはずです。
また、ところどころにあるATSUさんの“一言アドバイス”では、英単語を覚えるコツや似た単語のニュアンスの違いなど、学生時代からブランクのある方にとってはうれしい情報が詰まっています。
英語の学び直しにチャレンジする方の“はじめの1冊”として、本書はとても効果的と言えるでしょう。
確かに、大人の学び直し教材としてはイイかも!
ボク自身も学び直しの「はじめの1冊」として使用しました!
退屈な単語帳で挫折したことがある・単語学習に苦手意識がある
本書は過去に単語学習で挫折したことがある、苦い記憶があるという方にもおすすめです。
ボク自身、過去に見てきた単語帳との違いに驚かされた一人ですが、本書での学習はこれまでの単語学習とは明らかに異なる経験でした。
そもそも過去に挫折した経験のある人は、単語帳を開くこと自体に抵抗を感じてしまい、単語学習を必要以上に難しく捉えているのではないでしょうか。
そのような方はどうしても「自分には英語センスが無い」「自分には継続するための根気がない」といった感じで、自分自身を責めてしまいがちですが、単純に単語帳がつまらなかっただけかもしれません。
ボクはそんな人にこそ、本書を手にとってほしいと思っています。
学生時代、「単語帳を買う→挫折する」の繰り返しだったんですよねぇ。
堅苦しい単語帳しかなかったから、挫折するのが当たり前ですよ。
毎日、一定の学習時間を確保できる
次におすすめしたいのは、「毎日、一定の学習時間を確保できる」人です。
先ほども紹介しましたが、この単語帳は「Active Recall」で復習箇所を示しているという特徴があります。
この復習範囲は、単語帳が後半へ進んでいくにつれて増えていきます。
例えば、【 Chapter02 】で指示されている復習範囲はChapter01のみですが、最後の【 Chapter40 】での復習範囲はChapter20・25・29・33・36・39となっています。
実際に学習してみた経験から言えば、後半部分では、復習に多くの時間が必要でした。
Distinction 2000の指示通りに学習を進めていくとすれば、やはりある程度の学習時間を毎日確保できる方でなければ、前半は何とかこなせても、後半はボリュームの多さに対応できなくなってしまう可能性があります。
ですので、毎日一定の学習時間を確保することができることが理想的ですし、それができない場合、自分で復習する範囲を計画する必要があるでしょう。
しっかりと英語学習に向き合う覚悟も必要ってことか。
その覚悟をもって取り組めば、これほど効果的な単語帳はありません!
単語帳だけでなく、いろいろな学習目的で使いたい
1冊の単語帳を「単語帳としてだけでなく、いろいろな学習目的で使いたい」という方にもおすすめです。
ボクはよく英語長文の参考書を音読教材として使います。
長文の問題を解いて、解説を見るだけで終わりにするのではなく、音読を繰り返すことで、解説で説明されている理論を感覚に落とし込んでいくことができます。
本書も同じような使い方ができます。
ひととおり単語帳として使って、それぞれの単語をおおまかに頭に入れた後に、音読やシャドーイングを重ねれば、Distinction 2000 に収録されている英単語・熟語を感覚に落とし込むことができるのです。
先ほどから話しているように、長文のクオリティも収録音声のクオリティも言うことなしなので、音読教材・シャドーイング教材としても質が高いと言えます。
シャドーイングが効果的なのはわかってるけど、良質な教材って少ないような気がする…。
音読は単語だけでなく、文法や英文のリズムを自然と身につけられるのでおすすめです!
おしゃれな単語帳だとテンションあがる
単語帳であれ何であれ、おしゃれな方がテンションあがるという方いますよね。
ボク自身もその一人なのですが、おしゃれというだけで毎日単語帳を開くのが楽しみになります。
本書はおしゃれであると同時に、デザインの主張が控えめで、学習の邪魔をすることがないことも特徴の一つです。
カバーデザインやイラストに加えて、それぞれの単語が均等にバランスよく配置されていて、ATSUさんのこだわりを感じることができます。
単語帳によってはあれもこれもと詰め込みすぎて、レイアウトのバランスを崩してしまっているものもありますが、本書は必要十分な情報が程よく掲載されている印象です。
おしゃれというだけではなく、デザインの主張が強すぎない点もいい!
毎日学習する上では、意外と重要なポイントですね!
Distinction 2000 のおすすめの使い方
単語帳→音読・シャドーイング教材の流れがおすすめ!
先ほども軽く触れましたが、本書のおすすめの使い方を一言で言うならば、「1・2周目は単語帳として、3周目以降は音読教材・シャドーイング教材として使う」という方法です。
Distinction 2000 ではActive Recallという仕組みを通じて、1回あたりの復習範囲を指定していますので、その通りに学習するのがベストだと思います。
1周目では後半に行くにつれて復習量が多くなり、なかなか大変ですが、実際にやってみると、記憶の定着率が高くて、Active Recallの効果の高さを実感できます。
2周目の学習の進め方もActive Recallで示してくれていますので、その通りに復習しましょう。
3周目になると、ある程度、見出し語の意味はアタマに入っている状態だと思うので、①回転率を上げること、②音読学習を取り入れることを重視して学習していきます。
この単語帳はChapter 40まであります。Active Recallの指示通りに回していくと、1周目では40日、2周目では20日かかります。この回転率を3周目以降では上げていきます。
ボクは、3周目は1日目に【Chapter 1・11・21・31】、2日目に【Chapter 2・12・22・32】といった感じでまわしていって、10日で1周するペースにしました。
そして、3周目以降は、単語ひとつひとつの復習よりも、例文や長文の音読の方に重点を置くようにしました。
単語の意味をサッと復習してから、長文を音読することで、文の流れの中で単語の意味を理解することができるので、より効果的な復習ができると思います。
また、本書は収録音声にもかなりこだわっています。
英語教材の中には、必要以上にアクセントを強調したり、抑揚をつけたりして、不自然な音声になってしまっているものもありますが、本書の音声は、「ネイティブが隣で話している」ような自然さを追求しています。
ですので、シャドーイング教材としてもハイレベルな教材と言えるでしょう。
※おすすめの音読学習法・シャドーイング学習法については、以下の記事にまとめています。
Distinction 2000 は大学受験にも使える?
受験勉強でも使えますか?
受験の先を見すえて勉強したいのならアリです!
これは個人的な感想なのですが、Distinction 2000 は大学受験にも“対応可能”ではあると思います。
ただ、「大学受験に“最適な”単語帳か?」と聞かれたならば、ボクの答えは「NO」です。
そもそも大学受験を念頭に作られた単語帳ではないので当然ですが、収録されている単語が大学受験の対象とは異なります。
また、本書は「真の英語力養成」を目的としていることもあり、関連語のボリュームがかなり多いように感じました。
大学受験において必要なことは、「知識をたくさん持つ」ことよりも「試験に必要な量の知識を固める」ことです。
ATSUさん自身が、「大学受験に合格しさえすればそれでいい」という方はターゲットではないと語っているので、入試での合格を最優先にしている受験生にとっては、やはり大学受験に特化した単語帳がベストかなと思います。
その一方で、あなたが英文学科を志望している受験生・大学入学後に留学を検討している受験生であれば、選択肢の1つとして検討してみる価値は十分にあると思います。
また、例えば、大学受験用の単語帳とは別に、音読教材・シャドーイング教材として使用するのもアリだと思います。
Distinction 2000 の概要
Distinction 2000 の目的
Distinction 2000 は、英語の試験で使われる【学術的な英語】と、日常会話やビジネスで使用される【実践的な英語】をバランスよく取り入れています。
それはこの単語帳が、さまざまな場面で通用する英語力を養成することを目的としているからです。
まず、Distinction 2000 の冒頭でこれまでに出版されてきた英単語帳を2種類に分類しています。
①「こんな英文どこで使うの?」と聞きたくなるような、非実用的な例文ばかりが掲載されているもの。
② ①とは反対に実用的なフレーズが学べるけど、簡単な例文ばかりでしっかりとした英語力を養成できないもの。
この2種類しかないと指摘しています。
そのうえで、そうした従来の英単語帳とは異なり、【学術的な側面】と【実用的な側面】の両方を最高のバランスでまとめて、立体的な英語力の養成に役立つのが本書です。
Distinction 2000 の構成
Distinction 2000 は、経済、音楽、政治など合計40のトピックから構成されています。
難解なテーマにも見えるものもありますが、その背景には、さまざまなテーマに触れることで、英語力を身につけたその先まで描けるような1冊にしたいという著者の思いがあるからです。
各トピックは【アカデミックセクション】【プラティカルセクション】【スナップショットセクション】の3つから成り立っています。
【アカデミックセクション】では、先ほど説明した【学術的な英語】に焦点を当てたセクションです。
例文とともにイラストが掲載されていて、このイラストは、例文を読む際に日本語に頼るのではなく、学習者の「英語脳」を作り上げるためのものです。
イラストの使い方については、ATSUさんご本人が解説してくれていますが、最終的にはイラストだけを見ながら英文をアウトプットできるようになることを目標に学習していってほしいとのこと。
うーん、レベルが高いですね(笑)。
【プラティカルセクション】では、【アカデミックセクション】から重要な単語をピックアップし、用法や関連語を掲載するとともに、各単語が実際にどのような形で使われるのかを自然な例文を使って紹介しています。
この例文のなかには、思わず笑ってしまうようなイキイキとした文章があり、楽しく学習を続けることができます。
【スナップショットセクション】
【スナップショットセクション】では、上の2つのセクションとは別の例文が出てきます。
日常会話やニュースなど、より実用的な英語が登場し、【実践的な英語】の学習ができます。
中には「ブログ記事」や「美術館のお知らせ」など、普段日本で生活していると触れることのない英文も掲載されていて、「英語ではこういう表現をするんだな」と勉強になります。
またこのセクションでも、重要単語をピックアップして、関連語等もまとめられています。
Distinction 2000 が推奨する英単語学習法
Distinction 2000 が推奨する英単語学習法は以下のとおりです。
発音を重視した学習
著者であるATSUさんは、英語の基礎として「①単語・②文法・③発音」の3つをあげています。
英語学習の基礎に「発音」をあげるのは珍しいと言えるでしょうが、ATSUさんの膨大な学習量や豊富な国際経験を考えると納得させられます。
この単語帳でも、そのような考えをもとに、国際的に幅広く使用されている発音記号を採用し、関連語にいたるまですべての収録語に発音記号が掲載されています。
英単語の正しい発音を、意味・スペルと紐づけて覚えることができるので、非常に実践的と言えるのではないでしょうか。
可算・不可算名詞をはじめから意識した学習
収録されているすべての名詞には、可算・不可算の表記がされています。
英語を含む外国語にはこのような可算・不可算の概念が一般的である一方、日本人学習者にとっては、なじみのない仕組みですので、どうしてもこの点の学習をおろそかにしがちです。
結果的に学習者の多くは、いったん英単語を覚えた後に、再度、可算・不可算の分類を学習し直すといったムダな学習手順を踏んでいます。
この単語帳ではそのようなことが無いように、はじめから可算・不可算を意識して学習することが可能です。
“超”自然なネイティブ音声を使った学習
この単語帳に付属している音声の特徴としてあげられるのは、「ナチュラルな発音であること」です。
実際に聴いてみて感じたのは、「必要以上に抑揚が付けられていない」ということです。
他の教材の中には、イントネーションやアクセントを強調するあまり、本当のネイティブ発音からはかけ離れてしまっているものもあります。
Distinction 2000 では、「ネイティブが隣で話している」音声をイメージしていて、抑揚はもちろん、音のつながりや発音のテンポなど細かいところにもこだわって音声収録をしています。
回転率&復習を重視した学習
Distinction 2000 は英単語の効率的な覚え方として、①高い回転率を維持すること、②定期的に復習することの2つをあげています。
①については、1語につきかける時間を30~60秒としたうえで、サクサクと進めていくことを提言しています。
②については、「Active Recall」という仕組みを用いて、どのChapterを、どのタイミングで復習すればよいのかをあらかじめ設定してくれています。
この2つによって、学習者は覚えた英単語を忘れる前に何度も学習し直すことが可能となり、とても効果的な仕組みだと言えます。
モチベーションを維持できる学習
Distinction 2000 の特徴のひとつが、学習者目線の単語帳であることです。
その中でも、学習者のモチベーションを下げさせない工夫がなされている点が素晴らしいと思います。
特筆すべきは「単語帳のデザイン・レイアウト」です。
最初にこの単語帳を目にして思うのは、「おしゃれだな」ということです。
ATSUさん自身、「単語帳の顔」ともいえるカバーデザインに、とてもこだわったことを語っています。
学習者がワクワクしながら学習するために、デザインの持つ役割を十分理解しているのです。
また、肝心の単語帳本編についても、見やすさ、シンプルさ、おしゃれさを高いレベルで満たしていて、学習者のモチベーション維持に大きく貢献しています。
Distinction 2000 のカスタマーレビュー
Distinction 2000 のamazonでのレビューを紹介します。
なお、記事執筆時点で星5つ中4.3という、とても高い評価となっています。
Distinction 2000 とDistinction Ⅰ~Ⅳ の違い
Distinction 2000 とDistinctionⅠ~Ⅳ は、ともにATSUさんが執筆した英単語帳ですが、それぞれの違いは以下のようになっています。
Distinction 2000 は、2000語の英単語を収録しており、英語初級者から中級者向けに作られています。一方、DistinctionⅠ~Ⅳ は、1冊につき400語の英単語を収録しており、英語中級者から上級者向けに作られています。
また、単語のレベルも異なります。
Distinction 2000 では、一般的な英単語の中から、日常生活でよく使われる2000語を厳選して収録しています。一方、DistinctionⅠ~Ⅳ では、より専門的な単語や高度な表現も含まれており、幅広い知識を身につけたい人向けの英単語帳です。
これから英語学習を始める方であれば、まずはDistinction 2000 を学習してみてから、DistinctionⅠ~Ⅳ に進むのがよいでしょう。
Distinction 2000 の音声ダウンロード方法
Distinction 2000 には、全ての単語の発音音声が収録されており、公式サイトから無料でダウンロードすることができます。以下の手順で音声データをダウンロードできます。
①Distinction 2000 の巻末に記載されているアドレスにアクセスします。
②ページ左側にある【完全版slow音声】【完全版natural音声】の箇所からダウンロードします。
音声データはMP3形式で提供されており、携帯音楽プレイヤーやスマートフォンでも再生することができます。
スマホですぐに音声を聴きたい場合は、「abceed」というスマホアプリをインストール後、Distinction 2000 で検索すれば、音声を【 natural 】【 slow 】の2つのスピードで聴くことができます。
まとめ:Distinction 2000 の英語力向上における価値
いかがだったでしょうか。
唯一、ダウンロード音声の機能面で不満に感じる部分がありましたが、それ以外はとても使い勝手がよく、全体的には大満足できる内容でした。
amazonのレビューで紹介した中には「字が小さい」という指摘もありましたが、ボクは気になりませんでした。
外装から内容にいたるまで、あらゆるところにATSUさんをはじめとする執筆陣の工夫を見ることができ、時代とともに英単語帳もここまで進化したんだなということを感じました。
TOEICをはじめとする資格試験対策はもちろんですが、その先にある英語力向上を目指す人にこそ、ぜひお勧めしたい一冊です。
最近では、翻訳ツールなどの登場で「英語を勉強してもムダ」という声も聞かれるようになってきました。
ですが、ボクの考えは反対です。
LINEやZOOMの普及によって、家族や友人と直接会うことの価値が下がったわけではありませんよね?
翻訳ツールが普及していくからこそ、人間が自分のオリジナルな考え・価値観を、自らの声で語ることの価値は高まっていくと考えています。
また脳科学者の茂木健一郎さんは、世界のボーダーレス化によって、ネイティブの英語と同じように、非ネイティブの英語も重要性を増していく(既に増している)と語っています。
英語というツールが、ネイティブだけのものではなくなり、非英語圏の人々のコミュニケーションツールに姿を変えているからです。
その意味では、英語を話せることの意味はこれまで以上に重要ですし、英語を学び始めるのに最適なタイミングであるとも言えます。
本書はそのような新時代の英語学習にピッタリの1冊なのです。
この記事が、あなたの英語学習にとって役立つものであったなら、とてもうれしいです。
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