今回は英語の多読がもたらす効果について、個人的に感じたことをシェアしたいと思います。
多読はその名のとおり「たくさん読む」ことで英語理解を深めるための学習法です。
最近は、あらゆるメディアでその有用性が取り上げられ、効果的な学習法として推奨されています。
その多くが多読のもたらす効果についてさまざまな研究成果を示していて、あなたも多読に関する科学的根拠をある程度つかんでいるかもしれません。
ですが一方で、多読の「体感としての効果」や「その効果を得るための取り組み方」について踏み込んで解説しているサイト等はあまり見かけません。
多読に取り組むうえで本当に必要なのは、どこか遠くの研究機関で得られたデータではなく、多読を通じて得られる感覚や、その感覚を得るまでに求められるプロセスの方ではないでしょうか。
そこでこの記事では、自分自身が多読に取り組んだからこそ見えてきた「効果」や「取り組み方」について徹底的に深掘りします。
全体の流れとしては、以下のようになります。
- 多読の効果
- 多読と組み合わせて行うとよい英語学習
- 多読の効果をアップさせる取り組み方
- 多読におすすめの媒体・メディア
上記はいずれも、ボク個人の感覚や主観をもとにした内容となっています。
多読に対する世間一般の見方や、ほかの多読経験者の考えとは異なる部分もあるかと思いますので、理解したうえで読み進めてください。
多くの英語学習者に参考にしてもらえたらうれしいですが、とりわけ多読初心者や多読の効果を実感できていない方にとって、有益な情報が含まれていると思います。
この記事では、以下のような情報を知ることができます。
- 多読がもたらす効果・英語習得におけるメリット
- 多読と組み合わせて取り組むべき英語学習
- 多読の効果をさらに引き出してくれる取り組み方
- 筆者がおすすめする多読素材
この記事を書いた人
ヒラク
TOMOSU BLOG 運営者・執筆者
早稲田大学政治経済学部政治学科卒 / 現在TOEIC920点
多読にはどんな効果があるの?英語習得におけるメリット
多読にはさまざまな効果があるとされますが、ここではボクが感じた主観的な効果を紹介します。
以下の2つの効果を強く感じました。
英語のパターン認識
まず1つ目は「英語のパターン認識」です。
英文をたくさん読むことによって、英語の中にあるパターン・規則性を自然な形でつかむことができます。
ボクはまだまだ英語初心者ですが、それでもこれまでに数百冊の洋書を読んできました。また、受験・TOEICなどの資格試験でもたくさんの英文に触れてきました。
そうした経験を積むと、「英語ってこんなものなんだな」という感覚をおぼろげながらつかむことができます。
例えば英語を読んだり聴いたりしたときに、英語を英語のまま理解できます。
イチイチ日本語に置き換えることなく、意味をダイレクトにつかむことができるのです。
さらに、洋書を読んでいると、次にどんな単語が登場するかということが何となくわかります。英語試験の空所補充問題を解いていると、空欄に入る単語が、理屈よりも先に感覚でわかってしまいます。
たくさんの英文に触れてきた結果、脳が英語のパターンをつかみ、その枠組みの中で勝手に「次はこんな感じでしょ」と想像してしまうのです。
これはChatGPTをはじめとする AI の行う「ディープラーニング」に似ています。
すでに知っている方も多いでしょうが、「ディープラーニング」とは大量のデータを通じて、学習対象の持つパターンやルールをつかむ学習法のことです。
ボクたちはすでにこの「パターン認識」によって言葉を身につけるという経験を積んでいます。
赤ちゃんの時に日々、家族の間で飛び交う日本語を浴びるように聴き続けたことで、自然とその中にある規則性をつかんできたのです。
その浴びる量が増えるにつれ、規則性が拡大し、より複雑な表現も駆使できるようになります。
そのプロセスを英語学習において実現させてくれるのが、「多読」なのだと感じています。
一度読んだだけじゃ意味をつかめないことがあります。これって「パターン認識」ができてないってことなんですね。
ボクもそういった経験があります。量をこなして脳を英語化することでしか解決しないのだと思います。
ボキャブラリーの深化
また、「ボキャブラリーの深化」という点も大きな効果として感じました。
単語帳で学習しただけだと「英単語の表面的な意味を知っている」という状態ですが、多読によって「ボキャブラリーに深みが増す」と言えばよいでしょうか。
単語帳では一面的にしか見ることのできていなかった単語を、多読を通じて、多角的・複眼的に見ることができます。
例えば、ボクは単語帳の学習で【 devastate 】という単語を「(国・地域など)を壊滅させる」という意味で覚えていました。
ボクの脳内では【 devastate 】=「戦争で国がめちゃくちゃになる・治安が悪くなる」みたいなイメージで定着していたわけです。
それはそれで正しいのですが、多読を通じて、国・地域などのモノ・コトだけでなく、人に対しても使うということを知りました。(人の心を“壊滅する=ボロボロにする”という意味でも使われる。)
「この単語、そういう使い方するのか…」「実際にはこういう文脈で使うんだ」といった感じで、新たな発見がたくさんありました。
ボクは大学受験・TOEICなどを経験してきましたが、いわゆる試験英語の世界で圧倒的に不足しているのがこの「ボキャブラリーの深み」ではないかと思います。
多読は資格試験で足りない部分を補ってくれ、さらには単語帳での学習にもフィードバックがあり、相乗効果があるように思います。
ふむふむ、「ボキャブラリーの深み」ね。なるほど…。
ボキャブラリーを構築していく上で、両者は「車の両輪」の関係にあるのだと感じます。
効果を最大化!多読と組み合わせて取り組むべき英語学習
次に、上であげた多読の効果を最大化させるために、多読と組み合わせて取り組むとよい学習を提案します。以下の2つです。
構文の基礎(5文型)
1つ目は「構文の基礎」です。これは5文型の基礎知識のことを指します。
多読がもたらす大きな効果のひとつが「パターン認識」であることは先ほど述べました。
そのパターン認識のために、基本的なパターンをつかんでおくことが効率的なのです。
洋書を読んでいるといくらでも複雑な英文に遭遇しますが、どんなに難解な英文であってもそのすべてが「5文型」という基礎パターンの枠に収まります。
どんな英文であれ、5文型という枠からはみ出ることはありません。世の中に存在するすべての英文が5文型という土台の上に成り立っているのです。
ですから、まずはこの土台をつかんでおくことが必要です。
例えば将棋で考えてみましょう。
将棋が強くなるためには何十、何百と対局を重ねていく必要があります。勝ったり負けたりを繰り返しながら、勝つために必要なパターンをつかんでいきます。英語学習における多読はこの部分に当たります。
が、そうした実戦の前に最低限の原則を押さえておく必要があります。将棋の場合で言えば「駒の動かし方」だけは知っておかなければなりません。
どんな複雑な戦術であっても、「定められた駒の動き」という枠の中でしか成立しません。この部分が英語学習では5文型となるのです。
何度も対局を重ねて実地でパターンをつかんでいく前に、まずはすべての土台となる知識を持っておくことが必要であり、効率の良い方法です。
何度も繰り返される対局の中でしか得られない技術がある一方で、こうした知識は将棋における原則として定着しているものです。
原理原則は知識としてアタマで理解し、その先を感覚としてカラダでつかんでいくというプロセス。
これは英語学習も同じです。
原理原則として、正解として、ルールとして、わかりきっているものはザックリ理解しておく。そしてその上で多読に取り組む。
将棋も英語もすべてをアタマの中だけで、理屈として理解しようとするのはムリがあります。
一方で、何の前提知識もなく、やみくもにカラダで覚えようとするのも効率が悪い。
「じゃあ、アタマとカラダを使い分ける境界線はどこなの?」となりますが、それに対するボクの答えが「5文型の知識」ということになります。
英語における原理原則は構文であり、構文の中でも5文型です。
「まずは5文型を押さえてから多読に取り組みましょう」というのがボクの提案になります。
逆に5文型以外の特殊構文などは、アタマで理解するよりも、カラダで感覚として落とし込んでいくのが良いかと思います。
アタマとカラダの線引きが重要ですね!
単語・熟語
2つめは「単語・熟語」です。
ボキャブラリーについても、上で書いた「構文の基礎」と同じです。
まずは単語帳でザックリと理解する、そしてその先を多読でつかんでいくというプロセスになります。
繰り返しになりますが、この両者は相乗効果を生み出します。
多読によってボキャブラリーに深みが増すことは述べたとおりですが、個人的な感覚として、単語帳はボキャブラリーに広さをもたらしてくれると考えています。
だいたい単語帳には見出し語だけで2,000語程度の英単語・熟語が掲載されています。
関連語や例文に登場する単語なども合わせると、4,000~5,000語程度になるでしょう。
自分のボキャブラリーを広げるという意味において、単語帳での学習は効率がいいと思います。
中にはなかなか意味を覚えられない単語もありますが、そうした単語に多読で出会うと一発で意味を覚えられちゃいます。
「単語帳で覚えられなかった単語が出てきた!」という強烈な印象が生まれるので、記憶に定着しやすいわけです。
多読のおかげで記憶に残る一方で、そもそも単語帳で目にしていなければそうした印象も生まれないわけですから、完全な相乗効果ですよね。
めちゃくちゃ相性のいい組み合わせだと思います。
相乗効果もあり、補完性もある。めちゃくちゃお得な組み合わせ…!
ボク自身、今現在「単語帳×多読」を英語学習の軸に据えてます。英語力アップのためにはベストな組み合わせかと。
英語多読の正しいアプローチとは?より効果的な取り組み方
それでは次に、多読をより効果的にする取り組み方を考えてみたいと思います。ボクがあなたに提案したい取り組み方は以下の2つです。
難しい本も読む
1つ目は「(英文レベルが)難しい本も読む」ということ。
パターン認識のために何が必要かということを考えると、当然この答えにたどり着きます。
パターンの中には簡単なものだけが存在するわけではありません。難しいものも存在します。
例えば AI がディープラーニングを行うときに、簡単なデータだけをピックアップして、難解なデータは見てみぬふりをしていたとしたら、その AI が提供する情報を信用できるでしょうか。
英語学習においても、パターン認識のためには、易しい・難しいの区別なく、ありとあらゆる情報に接する必要があります。
「自分は初心者だから…」と言っていつまでも簡単な洋書ばかりを読んでいては、多読のもたらす効果を半分も享受できていないことになります。
脳科学者の茂木健一郎さんは、洋書の多読に関するアドバイスとして「初心者がいきなり最難関の洋書にチャレンジすること」を勧めていますが、その根拠がこの辺りにあるのでしょう。
当然、難しい本を読んでいると「サッパリ意味が分からない」なんてことがあるでしょうが、それでいいんです。
日本教育では「理解できなければダメ」「正解にたどり着けなければダメ」とされますが、多読ではそんな考えは捨てちゃいましょう。
江戸時代の寺子屋教育では「素読」という教育法が行われていました。
そこでは、10歳にも満たない子供たちがわけもわからぬまま先生の後に続いて漢文を読み上げていたのです。
何度も何度も繰り返すうちに、少しずつ意味がつかめてくるのだそうで、近年この教育法が再評価されています。
多読を通じてサッパリ意味が分からないほど難しい英文に触れたことが、後々あなたを助けてくれます。
点がいずれ線になる。これがパターン認識なのです。
そのためにはコンフォートゾーン(スラスラ読める英語レベル)から飛び出すことが必要になるでしょう。
飛び出せ!飛び出すのじゃ!
お、おぅ…。
日本語を排除する
2つ目は「日本語を排除する」ということです。
翻訳家・大学院教授として活動する橋本大也さんは著書のなかで次のように語っています。
英語学習の最大の敵は日本語です。可能な限り、頭から、生活から、日本語を追い出しましょう。目にするものをなるべく英語に変えましょう。
橋本大也『英語は10000時間でモノになる ~ハードワークで挫折しない「日本語断ち」の実践法~』
これはつまり、多読によって英語に触れる機会を増やすことが効果的であると同時に、自分の生活からできるだけ日本語を排除することが必要であるということです。
橋本さんは英語に触れる時間を増やすことよりも、日本語に触れる時間を減らすことの方が大事だと語っています。
多読学習の範囲内においても、「辞書を使わない」「脳内で日本語に訳さない」といったことが効果的です。
また、英語学習全般のハナシになりますが、ボクはこのブログで社会人の方に対し「文法はあまり勉強しないようにしましょう」と提案しています。
文法は英語の規則を“日本語で”学ぶ分野です。やればやるほど英語ではなく、日本語に触れている時間が長くなってしまいます。
日本語だらけの参考書を読み込む学習を続けていては、どっぷりと日本語に浸かっているだけで、いつまで経っても英語脳にはなれませんし、多読の学習効果を半減させてしまいます。
多読の恩恵を十分に受けることができるよう、できる範囲で「日本語の排除」に取り組んでみてください。
ボクは海外ドラマを英語音声・英語字幕で見るようにしています。
普段見るYouTubeを英語圏の動画に置き換える、ってのもありですね。
どんどん読んで英語力アップ!おすすめの多読素材
ボクが多読用の素材としてあなたにおすすめするのは次の3つです。
Short Stories in English for Beginners
これから多読に取り組む方におすすめなのが『Short Stories in English for Beginners』。
多読でまず大切なのが「はじめの1冊を読み切ること」。
初心者向けの多読本は「簡単だけどつまらない」ことがありがちだけど、本書はしっかりと読みごたえがある。
総ページ数も240ページあり、ボリューム的にもじっくり取り組むことができる。
単語解説や物語の要約などもあるほか、ところどころにイラストも付されていて読者の理解を助けてくれるのがうれしいポイント。
内容・構成などよく考えられていて、良書だと感じた。
amazon kindle unlimited
多読をするうえで外せないのが、アマゾンの『kindle unlimited』。
初めての利用であれば、最初の30日間は無料体験ができるので、お試しで登録してみるのがおすすめ。
2カ月目以降も月額980円と、本1冊の価格で数えきれないほどの本を読める。
普段あまり読むことのないジャンルにも気軽に手を伸ばせるので、読書の幅が広がるのもうれしいポイント。
ハリーポッターのような定番を読める一方で、多読初心者向けのラインナップも充実している。
定額なので、「つまらなかったらやめる」ができるあたりも多読向き。
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※多読初心者におすすめの洋書は↓こちらの記事にまとめています。よければどうぞ。
まとめ:英語を浴びる
いかがだったでしょうか。
多読について、個人的な考えをお話しました。
ボクはこれまで、資格試験の世界では一定の成績を収めてきましたが、一方で試験のための英語力はリアルな英語の世界ではまったく通用しないということを何度か経験してきました。
例えば、早稲田大学に合格した直後、書店で英語雑誌を手にしたものの、まったく読めなかったときの衝撃を今でもはっきりと覚えています。
「あんなに勉強したのにこんなにも歯が立たないのか」と感じました。
英語の奥深さ、無限の奥行きを肌で感じた瞬間でした。
受験勉強を通じて、英語の浅い部分をアタマで理解していたものの、深い部分をカラダで理解する経験が圧倒的に不足していたのです。
その深みを埋めるために効果的なのが、今回取り上げた多読なのだと思います。
深みに到達するために量をこなすこと。そして、その量をこなす過程で最適な学習と組み合わせること。
受験のようにアタマで理解しただけでどうにかなる世界ではありません。
英語を深く理解するためにはアタマもカラダもフル稼働し、文字通り英語を浴びることが大切なのだと思います。
この記事があなたの多読ライフ、ひいては英語学習において役立つものであったならとてもうれしく思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。