今回は、英語学習における「多読」について、掘り下げていきたいと思います。
英語力アップへのアプローチはたくさんありますが、その中で最も効果の高い方法が「読む」ということではないでしょうか。
個人的に、このブログを運営していること、そして自分自身が現役の英語学習者であることから、さまざまな学習法をリサーチし、体験してきました。
そして、英語力アップ、とりわけ英語脳の養成のためには「読む」ことが一番だと確信しています。
以下ではまず、①「多読」を推奨している有識者のハナシを紹介し、次に②多読をするうえで必要な考え方・取り組み方、そして③多読にオススメの本(媒体)の順で展開していきます。
多読の根拠として、有識者の科学的な分析をベースに、ボク個人の体験談も織り交ぜながら、できるだけわかりやすく、コンパクトにまとめてみたので、ぜひ最後までご覧ください。
こちらの記事では、以下の情報を知ることができます。
この記事を書いた人
ヒラク
TOMOSU BLOG 運営者・執筆者
早稲田大学政治経済学部政治学科卒 / TOEICスコア 現在920点
なぜ多読が英語力アップに繋がるの?その根拠は?
まずはじめに、多読の効果について科学的な根拠を紹介したいと思います。
といっても、「○○大学の研究で~」という話はつまらないので、実際に多読を行い、その有用性を訴えている有識者の「多読」に対する分析を紹介したいと思います。
茂木健一郎(脳科学者)
茂木健一郎
1962年(昭和37年)10月20日生まれ。
脳科学者・ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。
脳科学者としてメディアにも頻繁に登場しているが、英語学習に関する情報発信も多数行っている。
「素読・音読」など読むことの効果を高く評価する一方、英文法学習やTOEIC試験の在り方などについては疑問を呈している。
自分で髪をカットしているらしい。
まず紹介するのは、脳科学者としてメディアにも頻繁に登場している茂木健一郎さんです。
茂木さんが提唱する英語学習法の中によく登場するキーワードとして「多読」があります。
彼が日本の英語学習プロセスにおける大きな問題点として指摘しているのが、「英語について“日本語で”語っている」点です。
日本語訳を重視したり、英文法を日本語で分析したりすることは試験には有効であっても、脳の神経回路を英語化するうえではまったく無意味だと言います。
脳を英語化するために最も有効なのは、多読、とりわけ音読だと言うのです。
とにかく読んで読んで読みまくること、そして、分からない単語があってもいいので、自分の英語力よりも難しめの本にどんどんチャレンジすることを勧めています。
また、英語の本を読むことが理想ではあるけれど、試験問題をたくさん解くこと=試験に登場する英文を大量に読むことでも十分効果が望めるとしています。
※今回の記事執筆にあたり参考にした本。茂木さん推奨の英語学習法についてまとめられています。
橋本大也(大学教授・翻訳者)
橋本大也
デジタルハリウッド大学教授。多摩大学大学院経営情報学研究科客員教授。早稲田情報技術研究所取締役。
2000年に自然言語処理と機械学習をコアにしたビッグデータ分析ベンチャーを設立。
2016年に教育分野に転身、大学で教鞭をふるっている。
データサイエンス人材育成の第一人者。
優しい顔してるけど、「英語は10000時間でモノになる」というドSなタイトルの本を執筆している。
大学教授・翻訳者として活躍する橋本大也さんは、その著書『英語は10000時間でモノになる』の中で「多読」の有用性を訴えています。
著書の中で彼は、「インプット仮説」という学説を紹介しています。
インプット仮説とは“語学学習においては書かれた言葉や話された言葉を「読む」「聴く」ことが言語能力の向上の(ほぼ)すべてだ”とする、インプットを非常に重視する説です。
そして、学習者が理解可能なレベル( i )よりも少しだけ難しいレベル( i+1)のインプットを大量に受けることが最も効果的だとしています。
橋本さんはアウトプットももちろん重要だとした上で、「インプットが9、アウトプットが1」で良いと結論付けています。
大量にインプット(読む・聴く)をこなして、アウトプット(話す・書く)はインプットを通じて身につけた知識を試す程度で構わないそうです。
また、インプット仮説と一部異なりますが、少し難しいレベルの本( i+1)を読みつつ、少し簡単なレベルの本( i-1)を読み漁るのもおすすめだそうです。
自分の英語レベルの-1~+1のレベルの本を読むのがベストということになるでしょう。
※今回の記事執筆にあたり参考にした本。橋本さんが多読でおすすめする洋書などが紹介されています。
スティーブ・カウフマン(言語学者)
スティーブ・カウフマン
1945年スウェーデン生まれ。現在はカナダで暮らす。
20カ国語を操るポリグロット(多言語話者)として知られる。
日本語も堪能で、在日カナダ大使館で勤務した経験も持つ。
言語学習アプリ「LingQ」を開発するなど、語学学習に関する発信を多言語で精力的に行っている。
20カ国語って…。凄すぎてピンときません…。
20カ国語を話すことができるという驚きの能力を持つスティーブ・カウフマンさんもまた、「多読」を高く評価している有識者のひとりです。
彼は、20カ国語を話せるようになるまでに積み上げた膨大な語学学習を通じて、「語学力の基礎となるのは多読(多聴)である」と語っています。
多読の優れている点として、【① コストの安さ】、【② 自分の興味のある分野の本を教材として使える】、【③ 「間違える」ということ(発音を間違える・問題解答を間違える etc )がない】、といった点を挙げています。
そのかわり、毎日多くの英文を読むためには、学習者それぞれに強い意志が必要だとも話しています。
学習する人が高いモチベーションをもって、自らが学習の主導権をとりながら「多読」を継続すれば最強の学習法なのだそう。
彼自身も語学教室に通ったり、現地に行ったりした一方で、最も時間を費やしたのは「多読(多聴)」ということです。
カウフマンさんはYouTube動画の中で「語学学習には圧倒的なインプットが必要」と話していますが、非常に説得力があります。
※カウフマンさんが開発に携わった語学アプリ
英語の多読のやり方・意識すべきこと
次に、多読のやり方や、多読を行う際に意識すべきことについて、考察してみたいと思います。
Repetition and novelty
まず1つ目の考え方は「Repetition and novelty」です。
これは、先ほど紹介したスティーブ・カウフマンさんが述べていることなのですが、「多読」というプロセスの中で、【 repetition=繰り返すこと 】と【 novelty=新しいこと 】の2つを意識するということになります。
1つの本(英文)をじっくり、繰り返し読むことと、どんどん新しい本(英文)に手を出すことを並行していくのが良いのだそう。
この考え方に、先ほど紹介した橋本大也さんの手法を取り入れるとすると、自分の英語レベルより難しめの本を繰り返し、じっくり読む。(repetition)
そして、自分の英語レベルより易しめの本をバンバン読み漁る(novelty)、ということになるでしょうか。
また、ハードカバー本や小説をrepetitionに、雑誌や試験問題の英文をnoveltyに、といった感じで、ジャンルごとに分類するのも良いと思います。
ボクは今現在、仕事やブログ運営に役立つ本はじっくり読む。それ以外は気楽に読み漁る、って感じに分けてます。
英語力アップまでには時間がかかることを頭に入れておく
次に意識すべきこととしてあげられるのが、「多読の成果が出るまでには相応の時間がかかる」ということです。(上のグラフを参照)
脳科学者の茂木健一郎さんは「英語の多読にはサイレントピリオドという期間があり、この期間を乗り越えることが大切だ」と話しています。
この「サイレントピリオド」とは、自分ではなかなか成果が感じられない時でも、脳の神経回路は英語化している期間のことです。
ボクのこれまでの経験では、毎日英文を読む時間を確保したとすれば、「サイレントピリオド=3か月」という感触を持っています。
3か月続けると、英文を返り読みする必要がなくなる・意味を考えるときに日本語に置き換える必要がなくなる、といった効果を感じることができます。
個人差はあるでしょうが、多読を始めてすぐに長文をスラスラ読めるようになることはまずありえないので、英語力アップを実感できない時期であっても、脳は英語化していっているんだと自分に言い聞かせることが重要です。
サイレントピリオドで諦めちゃう人が多いんだよなぁ。もったいない。
できるだけ辞書は使わない
次に方法論の話にもなりますが、「できるだけ辞書は使わない」ことも大切です。
英語の本を手にとれば、よほどの上級者でない限り、必ずわからない単語やイディオムが登場しますが、辞書は極力使わずに、大まかに意味を理解しながら読んでいくことが重要です。
ここでも、茂木さんの指摘を紹介しますが、脳科学的に言えば、日本人の脳内では「日本語」と「外国語」を処理する部分が異なるそうです。
英文を読みながらイチイチ辞書を引いていると、脳内の「日本語を担当する部分」と「英語を担当する部分」を行ったり来たりすることになり、効率が悪く、ひとつの文章を処理するのに時間がかかってしまいます。
また、英語を読んでいるにもかかわらず、いつまでも「日本語領域」に頼ってしまうことで、「英語領域」が成長しづらくなり、なかなか英語脳に転換しないという弊害もあります。
そうした弊害を避けるためにも、辞書をできるだけ使わずに読み進められるレベルの本( i-1~i+1)を選ぶことも大切になってくるでしょう。
脳のメカニズム的にも辞書は使わないほうがいいのね!
自分の「好き」を読む
個人的に1番大切だと思うのがこの、「自分の『好き』を読む」ということです。
先ほど有識者3人のエピソードを紹介しましたが、この3人が口をそろえて、「多読は楽しむことが大切だ」と話しています。
「勉強」という意識は捨てて娯楽・知的エンターテイメントといったような感覚で継続するのが良いと思います。
勉強と娯楽のボーダーラインがあいまいになって、楽しみながら英語力をアップさせられるのが多読の良いところではないでしょうか。
難しいこと考えるより、楽しんだもん勝ちです!
費用・時間ともに無理のない範囲で
たくさんの本(英文)を読むことには当然、たくさんのコスト・時間が必要になってきます。
他の英語学習にもある程度のコスト・時間がかかることを考えると、「多読」に使える費用等も抑えたいところですよね。
「多読」のコスト面で言えば、「図書館を使う」、「amazon kindle unlimitedなどのサブスクを使う」「資格試験の英文を読み物として使う」といった手段が考えられます。
また時間の面で言えば、「通勤・通学時間を使う」、「ベッドに入ってから眠くなるまでの間だけ」といったスキマ時間の活用も有効でしょう。
「多読」が有効とは言っても、他の学習とのバランスも大切なわけですから、無理のない範囲で継続していくことを目指しましょう。
電子書籍だと比較的安いし、大幅に値下げしてることもあるからお得じゃ!
英語の多読・本の選び方
英語の多読本を選ぶときの3つの基準
個人的に、本を選ぶときの基準としては以下の3つがあると考えています。
- レベル(英文の難しさ)
- 内容(自分が興味深く読めるジャンル)
- ボリューム(日々の生活の中で無理なく読める分量・ページ数)
レベルを重視する選び方であれば、以下でも紹介しますがラダーシリーズをはじめとするGraded readersなどが良いと思います。
レベル別に使用する単語を制限しているので、自分の今現在の英語力に合わせて本を選ぶことができます。
内容を重視する選び方の場合、先ほど挙げたように、自分の“好き”を読むことに加え、「実益を得られるジャンル」の本を選ぶといった選び方もあります。
社会人の方であれば、仕事に役立つ情報を得られる本、学生の方であれば、自分の専攻分野の本などです。
その本を読むことによって、仕事や学業において大きなフィードバックを得られるので、興味深く読み進めることができます。
さらに、意外に見落としがちなのが「ボリューム」です。
いくら自分の好きなジャンルであっても、仕事の忙しい時期に分厚い洋書を読破するのはハードルが高いはず。
あなたのその時々のライフスタイルに無理なく取り入れられる分量の本を選ぶことも重要だと思います。
ボクは最近、ブログ執筆に役立つ文章術の洋書を読みました。
ブログに役立つ情報(実益)と英語力の一石二鳥です。
3つの基準のうち、どれを大切にすべきか
では、その3つの基準の中で最も重視すべきポイントはどれでしょうか?
最終的には、あなた自身の判断になりますが、ボクはやはり内容=自分の“好き”を重視すべきだと考えます。
日本人が学校で多くの時間を費やしているにもかかわらず、英語力が向上しないのはなぜだと思いますか?
さまざまな理由があるとは思いますが、ボクは「英語を段階別に区切ってしまっていること」が大きな要因だと思います。
例えば、文科省の学習指導要領では、中学校で覚えるべき英単語は1,800語程度、高校では2,500語程度としています。
英語学習者をレベルごとに枠に閉じ込めてしまい、その枠の中で100点が取れたらOKなわけです。
このやり方にも一定の意義はあるでしょうが、枠が外された世界に放り出されると、レベルごとに区切っていたやり方が弊害となって現れます。
先ほど紹介した茂木健一郎さんもこの点を問題視していて、だからこそ英語の多読ではレベルではなく自分の興味を大切にすべきだと訴えています。
茂木さんは実際に、初心者がいきなり英語の最高峰にチャレンジしてみることを勧めています。
多かれ少なかれ、日本人である以上、レベルに合わせた英語学習というのは学生時代に経験しているはずです。
だったら今度は、自分の興味を軸にした英語学習にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
レベルに合わせてつまんない英語を読むのはもうウンザリ…。
わたしも…。
英語多読・実際におもしろかった本・媒体
それでは、多読におすすめの本(媒体)について、上でも述べた Repetition と Novelty というジャンルごとにあげてみたいと思います。
【多読】repetition(繰り返し読む)におすすめの本・媒体
Ikigai: The Japanese Secret to a Long and Happy Life
日本人の持つ「生きがい」に焦点を当て、豊かな人生について考察する1冊。
外国人の視点で日本をテーマにする本は、背景知識が十分にあるため読みやすい。
さらには外国の方が切り取った日本像・日本人像がずれてて笑える部分もある。
ページ数も200ページ余りとコンパクトなので、多読の最初の1冊に最適。
英文も比較的簡単で読みやすい!
Factfulness
世界的にベストセラーとなった本書。
世界を数字で読み解き、読者に新たな気づきを与えてくれる。
「データを通して見た世界は確実に良くなっている」という主張に、読みながら明るい気持ちになれる1冊。
また、筆者が真実を伝えるために、家族の協力も得ながら努力してきたプロセスも興味深く読むことができる。
TOEIC800点台の時に読んだけれど、おおまかに意味を理解しながら読み進められるレベルだった。
たまたま図書館で見かけて手にとった1冊。データ本だけど、ワクワクしながら読めちゃいました。
英文 詳説世界史 WORLD HISTORY for High School
高校世界史の教科書として定番の山川出版社・『詳説世界史』の英訳版。
ボク自身は高校時代、日本史選択だったため、前提知識が無く、理解するのに苦労する部分もあった。
理解に必須な箇所の固有名詞などは調べる・それ以外はおおまかな理解にとどめる、といったようにメリハリをつけながら読了。
英文も含め、じっくりと腰を据えて読み進めるのに最適な1冊。
歴史好きにおすすめ!
世界史選択だった人はサクサク読めちゃうかも。
【多読】novelty(どんどん読む)におすすめの本・媒体
Short Stories in English for Beginners
「初めての洋書」にピッタリの1冊。
全編を通じて、簡単な英単語や理解しやすい構文で書かれていて、初学者・再学習者でも気軽に読み進めることができる。
英文に慣れる材料としては非常におすすめ。
オーディブル版と一緒に購入することで、リスニング教材としても使えるので英語力全体の底上げにつながる。
イラストや注釈も豊富で、初心者でも安心。
ラダーシリーズ
レベルごとに使用する単語を限定しているため、自分の英語力に合わせて選ぶことのできるラダーシリーズ。
シリーズのコンセプトとして、英語の多読学習を念頭に置いているので、教材としての質はピカイチ。
巻末にワードリストが付属しているため、辞書なしでガンガン読める。
難易度のみならず、ジャンルも文学・SF・ノンフィクションなど多岐にわたる。
個人的にレベル1・2でも十分に読みごたえがあったので、難易度よりも自分の興味のあるジャンルから選ぶのがおすすめ。
Level 1 | Level 2 | Level 3 | Level 4 | Level 5 | Special Edition | |
使用語彙 | 1,000 | 1,300 | 1,600 | 2,000 | 制限なし | Level 3~4に相当 |
TOEIC | 300~400 | 400~500 | 500~600 | 600~700 | 700点以上 | |
英検 | 4級 | 3級 | 準2級 | 2級 | 準1級以上 | |
iTEP | 0.0~1.0 | 1.0~2.0 | 2.0~3.0 | 3.0~4.0 | 4.0以上 |
ボクはラダーシリーズで、偉人の伝記を読むのが好き。
英字新聞 the japan times alpha
ボクは基本的に英文だけをチェック。日本語の訳や解説はどうしても気になる部分だけに抑えています。
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amazon kindle unlimited 【repetition & novelty の両方におすすめの媒体】
多読の材料を探すうえで最もおすすめなのがamazon kindle unlimited。
毎月、本1冊の価格で大量の洋書を読むことができる。
ジャンルも多岐にわたり、英字雑誌なども購読可能。
定額なので、「つまらなかったら読むのをやめる」「気になる部分だけ“ちょこっと読み”する」ができるのがうれしいポイント。
無料体験もあるので、自分に合う本があるかどうかを探してみよう!
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※多読におすすめの本については、以下の記事にまとめています。
まとめ:楽しむことが最強、かつ最短の多読法
いかがだったでしょうか。
有識者のハナシや自分の体験談など、さまざまな切り口から「多読」に焦点を当ててみました。
自分なりに「読む」ということを積み重ねてきて思うのは、「勉強」という意識を排除することが大切だということです。
英語学習者である以上、「英語力をアップさせたい」という“下心”は当然ありますが、勉強という意識があっては、なかなか楽しめませんし、継続することもできません。
上でも紹介したように、「自分の『好き』を読む」ことが継続に繋がりますし、ひいては英語力アップへの最短距離なのではないかと感じています。
ボク自身、今もなお英語の多読を継続中です。おすすめの本などがあったら、本ブログにてさらに情報をアップデートしていきたいと思います。
この記事があなたの英語学習に役立つものであったなら、とてもうれしく思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。