今回はシャドーイングの効果的なやり方とおすすめの教材について、ボク自身の学習体験をもとにお話しようと思います。
ボクは大学以来長らく英語からは離れていましたが、社会人になってしばらくしてから英語学習を再開。2023年10月、TOEIC900点台に到達しました。
その後も今回紹介するシャドーイング法をコツコツ継続した結果、本試験と同様のリスニング問題で安定して9割以上のスコアを出せるようになってきました。
シャドーイングはリスニング力アップのために必須の学習法としてすでに定着していますが、その方法論についてはたくさんの情報が出回っていて、英語学習者にとっては「結局どれが効果的なの?」とツッコミたくなってしまいます。
ボク自身、これまで実際にさまざまな方法を試してみました。今考えると、まったく的外れな学習法を選択してしまっていたこともあります。
いろいろと遠回りをして、最終的に最も効果を感じることのできた学習法をシェアしたいと思います。
TOEIC満点・英検1級といったような華やかな経歴があるわけではないので、説得力に欠ける部分もあるかもしれませんが、あなたと同じ、イチ英語学習者の体験談として少しでも参考にしてもらえる点があればうれしいです。
この記事では、以下の情報を知ることができます。
- シャドーイングが英語力アップにもたらす効果
- 実際に試してみて、最も効果のあったシャドーイング法
- シャドーイングを行う上で意識すべきこと
- シャドーイングにおすすめの教材
この記事を書いた人
ヒラク
TOMOSU BLOG 運営者・執筆者
早稲田大学政治経済学部政治学科卒 / TOEICスコア 現在920点
シャドーイングの効果~他の学習法との違い~
それでははじめに、シャドーイングの効果について話したいと思います。特に、シャドーイングならではの効果について説明するために、他の学習法と比較しながら話していきます。
上の図を見てください。どんな言葉であれ、相手の言ったことを理解するプロセスには①音声識別と②意味理解の2つの段階があります。
日本語に置き換えて考えてみましょう。ボクたち日本人は日本語であっても同じように①と②の段階を経て意味を汲み取り、コミュニケーションをとっています。
ですが、日本人が日本語を聴く場合、①音声識別にはほとんど脳の短期記憶(ワーキングメモリ)を使わずに済みます。生まれてからずっと日本語に接し続けてきたため、音声に対してはそれほど注意を向けなくてもいいのです。
ボクたち日本人が日本語を聴くときには②意味理解にほとんどのワーキングメモリを使っているわけです。
それでは、日本人が英語を聴く場面に移りましょう。
ボクたちが英語を聴きとるのに苦労するのは、日本語の場合とは逆に、①音声識別に脳のワーキングメモリの大半を使用しなければならないためです。
リスニング問題を始めた途端に頭がボーっとして、思考力が下がったような感覚になったことはありませんか?
これは、「今相手は何と言っているのだろう?」と音にばかり気を取られてしまうことが原因です。
リスニングに慣れていない学習者の場合、脳のワーキングメモリを音声認識に70~80%を使うとすると、意味理解に使える部分は20~30%しか残っていないことになります。
意味を考えるための力が少ししか残っていないので、思考力が下がったように感じるのです。
ですので、英語学習者がリスニング力を上げていく場合、日本語同様、①を自動的に行い、②に脳のエネルギーを集中させられるようになることが必要です。
そのための最強の学習法がシャドーイングになるのです。
そして、個人的な理解としては、シャドーイングは①と②のうち、特に①の音声認識を強化するための学習法だと感じています。
②の部分は音読や英文の多読・多聴などによっても伸ばすことができますが、①はシャドーイングでなければしっかりとした効果は感じられませんでした。
YouTubeで聴き流し動画を聴いたり、「ながらリスニング」をしてみたりもしましたが、はっきりとした効果は感じられなかったのです。
①を自動的に行うことができるようになるための学習法としてはシャドーイングがベストと言えるでしょう。
そして、②に脳のワーキングメモリを使えるようにするために、まずは徹底的に①音声認識を鍛えることが初学者にとって必要なことなのです。
頭がボーっとしちゃうのって、ちゃんと理由があったんだなー。
※リスニング全体の学習法については、以下の記事に詳しくまとめています。
効果の高かったシャドーイングのやり方
それでは、ボクがこれまでの英語学習において効果を感じたシャドーイングのやり方を紹介します。
シャドーイングはもともと通訳の方が行っていた学習法でした。
それを英語学習者のリスニング力アップにも有効だと提唱したのがアメリカの言語学者・アレクサンダー・アグエイアスという方です。
今回紹介するやり方も、彼の推奨する学習法となります。
以下では、より具体的に説明するため、1つの英文をどのような手順でシャドーイングするのかをステップごとに説明していきます。
①ブラインド・シャドーイング(Blind Shadowing)
まず最初のステップはブラインド・シャドーイングです。
ここではスクリプト(英文)は見ずに「音を聴いて真似する」だけです。
とにかく集中して音を聴き、音源と同じリズムで声に出します。
この段階では英文の意味を理解する必要はありません。
聴こえてくる音声をひたすら真似するだけでOKです。
聴こえてくる音声と同じように発音できるようになるまで繰り返します。
②シャドーイング・アンド・ライトサイド(Shadowing and Right Side)
次のステップはシャドーイング・アンド・ライトサイドです。
通常、テキストの右側に載っている日本語訳を見ながらシャドーイングを行います。
自分の発している音と、日本語での意味を脳内でつなげることが目的です。
意味の理解が100%になったら次のステップに移ります。
③シャドーイング・アンド・ボースサイド(Shadowing and Both Side)
次はシャドーイング・アンド・ボースサイドです。
英文と日本語訳、両方を参照しながらシャドーイングを行います。
自分が確実に聴きとれていると思う部分は英文を参照します。
あやふやな部分は日本語訳を見て、英文を予想します。
音ー意味ー英文を脳内で徐々につなげていくイメージを持ちましょう。
④シャドーイング・アンド・レフトサイド(Shadowing and Left Side)
次にシャドーイング・アンド・レフトサイドのステップです。
英文だけを見て、自分の発している言葉と英文の構成・意味を完璧につなぎ合わせましょう。
特に、冠詞や前置詞など、英文の中では弱く発音される部分もしっかりと聴き取れているか、最終確認してください。
4つのプロセスを毎日行うためにも、無理のない分量の英文を選びましょう!
シャドーイングをするときに意識すること
シャドーイングを行うときに特に強く意識していたことは次の3つです。
まずは音を聴きとることに集中する
まず意識すべきことは、「最初は音を聴きとることだけに集中する」ということです。
さきほども話したように、リスニングはまず音声を認識するところから始まります。音を認識できなければ、意味の理解にはつながらないのです。
今回紹介した方法が、音声を聴きとるステップと、意味を理解するステップに分かれていることは非常に理にかなったやり方だと思いますし、音の認識から入ることも合理的だと思います。
このことは、赤ちゃんの成長を考えるとよくわかります。
赤ちゃんは比較的早い段階で、「パパ」「ママ」「まんま」「ねんね」といった簡単な言葉を聴きとることができるようになります。
ですが、「パパ」とは何か、「まんま」とは何か、といった意味の理解はずっと後になってからですよね。
言葉を理解・習得するプロセスでまず優先すべきは「音の認識」なのです。
そして、ボク自身は少し極端かもしれませんが、「シャドーイングは音を理解するためだけのもの」と割り切っています。
先ほどもお話したように、英文の意味を理解するためには、シャドーイングだけでなく英語の多読・多聴や音読などさまざまなアプローチが必要だと思いますが、音を理解するための学習法はシャドーイングしかないと感じているからです。
リスニング力をこれから鍛えていこうという初学者の方は、上記のプロセスのうち、最初にあげた「ブラインド・シャドーイング」に時間を割くことをおすすめします。
リスニングは音の認識から始まるので合理的な方法だと思います!
最初は「量」よりも「質」
次に意識すべきこととして、はじめのうちは「量」よりも「質」を重視するということがあげられます。
ここでいう「質」とは、上記のプロセスを一つずつ、完璧に、丁寧にこなしていくことです。
例えば、ボクの場合、英語学習を再開して間もないころは、最初のステップである「ブラインド・シャドーイング」に時間がかかってしまい、それ以降のステップは次の日に学習するということがよくありました。
ですが、今になって思うと「ブラインド・シャドーイング」を完璧にできるようになるまで徹底的に繰り返したことがリスニング力の強化に確実につながったと感じています。
それぞれのステップを「何となく」で済ませてしまってたくさんの英文をシャドーイングするよりも、ひとつひとつのステップを丁寧に、主観的にも客観的にも100%できるようになるところまでもっていくことが大切だと思います。
はじめのうちは時間がかかってしまいますし、ナレーション音声のように滑らかに発音できないことにイライラしてしまうかもしれませんが、リスニング力アップのためにはそれも必要なプロセスなので、根気よく取り組んでみてください。
ボク自身もイライラしちゃってたのはナイショ…。
「サイレント・ピリオド」をあらかじめ認識しておく
上の「量」より「質」の話と一部重複しますが、英語学習(語学学習)には、サイレント・ピリオドという期間があります。
毎日たくさんの英語に触れ、シャドーイングもしっかりこなしているのにいまいち成果を感じられない期間があります。
脳科学者として知られる茂木健一郎さんによると、「本当にこのやり方で合っているのかな」「成長している実感が無いな」という期間であっても、脳の神経回路はしっかりと英語化していっているのだそうです。
ボク自身もこの時期を経験しましたが、この「サイレント・ピリオド」という前提知識があったおかげで、めげることなく毎日シャドーイングを続けることができました。
そして、ボク自身の感覚で言うと、シャドーイングを続けて100日程度経ったときに「しっかりと聴き取れるようになっている」と感じるタイミングが訪れました。
「聴きとること」と「意味を理解すること」がガッチリ噛み合っていることを感じ取ることができたのです。
この「サイレント・ピリオド」の期間に、いかにコツコツとシャドーイングを継続できるかがリスニング向上のカギを握っていると思います。
リスニングが苦手な人って、サイレントピリオドで諦めちゃってるだけ、だったりするんだよなー。
シャドーイングにおすすめの教材(TOEIC対策)
それでは、シャドーイングにおすすめの教材についてお話します。
シャドーイングの効果的なやり方を模索する中で、さまざまな教材を試してみましたが、その中でおすすめできるものを3つに絞って紹介します。
スタディサプリ
シャドーイング教材としてだけでも元が取れるほどのクオリティー。
\ リスニング力アップに最適! /
TOEIC(R) TEST 速読速聴・英単語
単語帳としておなじみの速読速聴シリーズですが、シャドーイング教材としても秀逸。
TOEICに的を絞ったシリーズも2冊(STANDARD・GLOBAL)出版されています。
TOEICに必要なリスニング力はもちろん、リーディング力・ボキャブラリーを総合的にアップさせることができるでしょう。
音声ダウンロード対応。
英文が左、日本語訳が右という見やすいレイアウトもGOOD!
TOEIC(R)L&Rテスト Part 3&4 鬼の変速リスニング
TOEICのPart 3・4に特化した問題集。その名も「鬼の変速リスニング」
各英文を高速→低速の順で聴いた後、3種類の音読トレーニングを行うという学習スタイルです。
講師の音声講義も付いていて、実際に授業を受けているような感覚で学習を進めることができます。
「日本人学習者の弱点発音ワースト5」など付録も充実。
音声はダウンロード・アプリの両方に対応。
高速から聴いていくというスタイルや音読教材にもなる点がGOOD!
まとめ:努力を楽しむ
いかがだったでしょうか。
シャドーイング学習について、ボク個人の学習経験をもとにお話ししました。
上で紹介した学習プロセスをそのまま実行するのも良いと思いますが、あなたの英語力や毎日の学習スケジュールに合わせてアレンジしてみるのも良いと思います。
例えば、ボクはシャドーイング学習に取り組み始めた初期の頃は、最初の「ブラインド・シャドーイング」のプロセスで「ディクテーション(聴きとった音を文字に書き起こす)」も行っていました。
音の聴き取りを本当に100%出来ているかを確認するためです。
そして、最近では「ディクテーション」は行わず、また「ブラインド・シャドーイング」中心の学習にアレンジしています。
ある程度英語力がついてきたので、「ブラインド・シャドーイング」の段階で音声の聴き取りだけではなく、意味の理解までできるようになってきたからです。
あなたが英語学習の初学者であるならば、まずは音の聴き取りをできるようにするために、どのようにアレンジすればよいのか。ボク個人の体験も参考にしてもらいながら、自分流のシャドーイング法を確立させてください。
最後に茂木健一郎さんの以下のツイートを紹介して終わりにしたいと思います。
ボク自身も現役の英語学習者です。楽しみながら毎日の勉強に取り組むことができたら素晴らしいですよね。一緒に目標に向かって頑張りましょう!
今回の記事があなたの英語学習にとって役立つものであったなら、とてもうれしく思います。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。